【長編】唇に噛みついて


「じゃぁ……聖菜が温めてよ」


ドキ……。


ば……。


「馬鹿じゃないの!?」


そう言って睨んだ。
すると丁度マンションの前に着いた。


「あ、着いちゃった」


なんて呟く須藤。
須藤はマンションを見上げた後、あたしを見下ろした。


「な、何……?」


あたしは自分の前に両手をクロスさせる。
すると須藤はフッと笑った。


「何もしねぇし。……あ、期待しちゃったぁ?」


「してない!一切してません!」


もう、絶対大人を馬鹿にしてる!!
遊ばれてるあたし!!


あたしは赤くなる顔を隠しながら背を向けて歩き出した。


「ちゃんとお風呂で温まってから寝なさいよ?」


風邪引いたら大変だし。


すると須藤がクスクス笑い出す。


……え?


何で須藤が笑い出したのか分からずキョトンとしていると、須藤は笑いを堪えながら口を開いた。


「きーちゃん、お母さんみたい」


「おかっ!?」


失礼な!!
23歳の乙女にお母さん!!


「ひ、人がせっかく心配してるのに!」


須藤をキッと睨みつけると、須藤はフッと微笑んだ。


「うん……ありがと」


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