【長編】唇に噛みついて


1時間経った頃。
ようやくお粥を作り終えたあたしは、須藤の元へ戻った。
スースーと規則正しい寝息が聞こえてきて、顔を覗き込んでみる。


……眠ってる。


整った寝顔を確認して、再びあたしはキッチンへ戻ろうとした。
その瞬間……。


グイ。


「え?」


突然腕を掴まれあたしはベッドに倒れ込んだ。
いきなり過ぎて間抜けな声を出し、キョトンとしていると須藤があたしの顔を覗き込んでくる。


えーっと……。
あたし、さっきまで何してたんだっけ?


「きーちゃん寝込み襲おうとしちゃ駄目でしょ?」


あたしの顔を覗き込みながらニッと意地悪な笑みを浮かべる。
その表情を見て、ようやく今の状況を理解したあたしは口を開く。


「ちがっ……!様子見にきただけよ!」


そう言って起き上がろうとすると、それを須藤は引き止める。
そしてもう一度あたしをベッドに寝かせると、あたしの上に覆いかぶさる。


「ねぇ、きーちゃん」


「な、何!?」


間近にある須藤の整った顔にあたしは恥ずかしくて真っ赤。
それでも負けじと須藤を睨みつけると、須藤は微笑みながら口を開いた。


「今の状況……分かってる?」


「へ?」


一瞬言っている意味が分からなくてキョトンとする。
そしてハッと我に返る。


あたし……須藤に押し倒されてる!!


ようやく理解して、あたしの顔が一気に熱くなる。
するとそんなあたしを見て、須藤はフッと目を細める。


「きーちゃんこれじゃ逃げられないね」


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