【長編】唇に噛みついて


すると須藤はあたしの頭に手を伸ばし、ワシャワシャと撫でる。


「ちょっ!何するのよ!」


髪がクシャクシャになんじゃん!
髪は女の命だと、こいつは知らんのか!?


慌ててその手から逃れようとすると、須藤はニッと笑った。


「いい子♪」


って、こいつぅー!!
あたしを完全に大人だと思ってない。
でも、くやしい!
不覚にも、ドキッとしてる自分がいるから……。


あたしは真っ赤になりながらもお粥をスプーンですくって、須藤に差し出す。
すると笑顔のまま須藤は口を開く。


「あーん」


こいつってそういう事平気でやるタイプ!?
顔からして想像できない……。


そう思いながらもあたしは必死。
顔を少し俯かせながら、須藤にお粥を食べさせる。
すると須藤はフッと笑った。


「ホントは口移しで食べさせてほしかったんだけど。っま、きーちゃんにはそれは無理だよな」


「っは!?」


く、くくく口移し!?


「馬鹿な事言わないで!!」


一気に顔に火がついたくらい熱い。
須藤を睨むと、須藤はクスクス笑った。


「ほら、言っただけで真っ赤になるもんな」


そう言って須藤はあたしを見つめる。


そ、それは……。


「突然言われたからよ!」


「あ、じゃー突然言わなきゃやってくれるんだ?」


し……。しまった。
こいつの挑発に乗ってしまった。


すると須藤はニヤッと笑う。


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