【長編】唇に噛みついて


「ふーん……。やっぱ聖菜は大人だからそういう事も平気でできるんだ。やっぱ大人は違うよなぁ」


こいつっ……。
人を馬鹿にしやがって。


「あんた……年上馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ?」


「じゃぁしてくれんの?」


須藤を睨んでいると、あたしの顔を覗きこむようにして呟く。


「する訳ないでしょ!?」


「何でー?」


何でって……。
恥ずかしい……じゃなくて、えーっと。


「風邪がうつるからよ!」


そう言ってあたしは須藤の口にたくさんお粥を押し込んだ。


「ごふっ!?……てめぇ、熱いじゃねぇか!」


須藤は口の中をヤケドしたらしく、涙目になっている。


そりゃそうだ。
フーフーして冷ましてないし。
大量に入れたし。


「自業自得よ」


あたしはフン!っと顔を背けた。
そして空になったお椀を持って立ち上がる。
あたしは乱暴に薬を差し出した。


「ほら!早く飲んで眠りなさい!」


そう言ってキッチンへと戻って食器を洗うと、部屋へ戻った。
すると須藤の姿を見てあたしはキョトンとした。


「あんた……まだ薬飲んでなかったの?」


見ると、須藤は手のひらに錠剤を持ったまま固まっている。
その姿を見てあたしはハッとした。
気づいたら、笑いがこみ上げてくる。


「もしかして……須藤……あんた薬飲めないの?」


笑いを堪えながら言うと、須藤はギョッとした顔をした。



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