【長編】唇に噛みついて


「んな訳ねぇだろ?……飲めるっつーの」


そう強気な言葉を言ってるけど、一向に飲む気配がない。


駄目だ。ウケる。


「っぷ……」


「お前、笑ってんじゃねぇぞ」


「だって……あはははは!!」


ウケる!
意外すぎてウケる!!


「普通にご飯飲み込むみたいに飲めばいいじゃんか」


そう言うと、須藤はキッとあたしを睨んだ。


「体が拒否して飲めないんだ」


こいつ……見た目によらず子供だ。


あたしは笑いを堪えながら、須藤に近づいた。
そして須藤の手から薬を奪ってそれを須藤の口に入れる。


「何すんだよ?」


「いいから」


あたしは嫌がる須藤を無視して、スポーツ飲料を飲ませた。


「はい!ごっくん!」


その言葉どおり須藤は飲み込んだ。
すると須藤は感動したように目をパチクリさせてあたしを見上げた。


「……飲めた」


そう呟くと興奮したように笑顔になった。


「すげぇ!俺初めて飲めた!!」


その笑顔はホントに無防備で……。
子供みたいに可愛かった。


「あんたさ……」


「ん?」


「そうやって……無防備に笑えるんだね」


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