【長編】唇に噛みついて
すると須藤の顔が近づいてきて、あたしの瞳をジッと見てくる。
そしてフッと微笑むと、口を開いた。
「目覚めのキス……しよっか」
「はぁ!?」
顔に火がついたみたいに熱い。
すると“あっ”と声を上げた須藤は残念そうに呟いた。
「風邪がうつっちまうか」
そう言って須藤はあたしのおでこにキスした。
そしておでことおでこをコツンとぶつけると、フッと笑う。
「唇は……治ってからな。それまで我慢しろよ?」
「っな!」
あたしは……。
あたしはぁ!!!
「別に我慢してないし!」
そう言ってあたしは須藤を睨んだ。
すると須藤はベッと舌を出した。
「あれ?そうだっけか」
何てとぼけたような顔をしてあたしを見つめた。
そして顔を近づけると、耳たぶを甘噛みする。
「嘘。俺が我慢してんだったな」
っくぅ……。
あたし……。ホントにおかしくなっちゃったのかな。
この気持ちは何なんだろうか。
前とは違う、この不思議な気持ちは。