【長編】唇に噛みついて
「だって!いきなりそんな事言うからでしょ!?」
口からボタボタ水を垂らしながらあたしは真弓を睨む。
するとそんなあたしの顔を冷たい目で見てくる。
「汚いから……拭きなさいよ」
そう言ってナプキンを投げつけてくる。
それをあたしは素直にキャッチして、口元を抑えた。
「てか!あれはホントに何でもなかったし!」
「どーだか」
っく。
全然あたしの話まともに聞いてくれようとしてない!
むー……。
ジーッと真弓を睨んでいると、いきなりあたしの前に顔が現れる。
「柏原!」
「っわ!!」
突然現れたのは水谷。
ヘラヘラ笑った顔に苛立ちを覚える。
だってこいつ、あたしの前に現れる時って……。
「今日は飲み会にご招待しにきましたぁ!!」
ほら。
やっぱ、ろくな事ないから。
「行かないよ。どうせ、飲み会という名の合コンでしょ」
あたしはカツどんを口に含みながら視線を逸らした。
すると懲りずにあたしの顔を覗き込んでくる。
「それが今回は違うんだな……」
「は?」
顔を向けると、人差し指を口元に当て左右に振っている。
その行動さえムカつく。
「実はさ。おれ達の同期の品川って奴がいるんだけどさ」
品川……?
「誰?知らない」