【長編】唇に噛みついて
あたしは全くといっていいほど興味がなくて顔を背ける。
すると水谷はまた顔を覗き込んでくる。
「4人でパーッと飲もうぜ!?」
はぁ?
眉間に皺を寄せていると、水谷は食堂の外を見て口を開いた。
「あ、品川!こっちこっち!」
大声で手を振る水谷。
あたしは何気なくその方へ顔を向けてみると。
「水谷……お前いきなり走って行くなよ」
「悪ぃ悪ぃ!柏原見つけてさ!」
その会話を聞いていて、どうやらこの男が“品川”らしい。
茶髪で笑顔……。
でも何となくチャラそうな印象を受けるのは、あたしだけだろうか?
ボーっと見つめていると、品川はあたしを見下ろしてニコッと笑った。
「あぁ、君が柏原さん?」
何か……。
こいつの笑顔、キモい。
好きになれない気がする。
「そうですけど」
あたしは無表情でムスッとしながら頷く。
あたしが柏原聖菜ですけど!?
だから何なんですか?って感じだよ。
すると水谷がニコニコしながら口を開いた。
「で、こっちが真弓な」
「よろしく」
やっぱ……!!
キモい!!
あの笑顔……キモい!