【長編】唇に噛みついて


すると一瞬の隙を狙って水谷はあたしの手から逃れてあたしから離れた。


「その事は謝っからさ。楽しんでくれよ?んじゃ」


「あ、ちょっ!」


引き止めたあたしを無視して水谷は走って行ってしまった。
その姿を見てあたしは溜め息をつく。


「真弓ーあんたいいの?」


隣にいると思って振り向いて聞く。と。
いない。
隣にいる筈の真弓がいない。
そっとテーブルに視線を移すと、すでに男子校生と馴染んでいる真弓。
すると真弓はあたしの質問に笑顔で答えた。


「いいじゃん♪あたしは参加ー♪」


そう言って両手を上げる。


真弓……高校生にも手を出すか。


あたしは大きな溜め息をついた。
てかさ。
あたしは会社での水谷の言葉を思い出した。


“金は男持ち”


って、高校生に金払わせるって事?


……ホントにいいのか?


「あ、はい。大丈夫っすよ。おれ達金持ちなんで」


そう言って笑顔を見せる高校生達。


金持ちって……それ自分の金じゃないだろ。
そのお金は親が働いて稼いだ金だろ?


何か許せないわー。そこんところ。


そう思いながらあたしはお酒をこれでもかってくらいに飲む事にした。
だってこうやって飲んでれば、男子校生も引いて声かけらんないでしょ。


その考えは当たりで、みんなあたしに話しかけない。


だってあたし、高校生に興味ないし。
お酒飲みたかっただけだしぃ。





< 8 / 286 >

この作品をシェア

pagetop