【長編】唇に噛みついて


その日。
仕事を終えて居酒屋にいるあたしの眉間には深ーい皺が寄っていた。


「聖菜ちゃんこれ食べる?」


そう言ってあたしの隣でベッタリくっついて微笑む品川。
もう飲み始めて1時間は経っているけど、ずっと離れずにいる。
あたしはご機嫌な品川を睨む。


「結構です。てか、その笑顔キモい」


フイッと顔を逸らして冷たく言い放つと、


「えー。酷い。傷つくなぁ」


「勝手に傷ついてろ」


こんな会話をして1時間。
まったく相手にしないあたしに、めげずに品川は微笑む。


てかさ?
こいつ絶対裏がある。
笑ってるけど、目が笑ってないし。
何考えてんのかさっぱり分かんないし。


とにかく!!
近づきたくない!
関わりたくない!
消え去れ!品川!


ムーッと怪訝な顔をしていると、品川は口を開いた。


「そういえばさ。聖菜ちゃん、高校生と付き合ってるの?」


「ぶはっ!?」


笑顔のまま呟く品川の言葉にあたしはビールを吐き出しそうになる。
そしてバッと品川を見上げた。


「いきなり何を言い出すのよ」


「え?だってお昼の時言ってたからさ?どうなのかなーって」


そう言って品川再び微笑む。


だからキモいって。


「あんたには関係ないでしょ」


須藤だって関係ないけど、こいつはもっと関係ない。
あたしの中に入ってくんじゃねー!!


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