【長編】唇に噛みついて


ボーっとしていると、須藤が立ち上がってあたしに近づいてくる。


「お前何でここにいんの?」


「え?……あぁ。会社の人と来て」


てか……。
こいつどんだけ私服格好いいのよ。


黒を基調とした服装は、いつも見てる制服姿とは違って色っぽい。
その姿に思わず見惚れていると、須藤の友達の1人が口を開いた。


「もしかして……。聖菜さんっすか?」


「え?」


なぜ、あたしの名前を知ってるの?


「えーっと、そうだけど……」


キョトンとしながら頷く。
すると後ろから声がかかる。


「聖菜ちゃん?」


「へ?」


その声に振り返ると、あたしは眉間に皺を寄せた。
後ろにいたのは満面の笑みの品川。


……こいつ!!
あたしの後ついてきたの!?


「あんた……っ、トイレにまでついてくる気!?」


「うん」


即答かよ……。


あたしは呆れながら、品川を睨んだ。


「いい加減にしてよ。ストーカー」


「えー酷い。聖菜ちゃんを好きなあまりについてきただけなのに」


「っな!」


は!?
こいつホントに何がしたいの!?


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