【長編】唇に噛みついて
そう言ってあたしをジッと見つめてくる。
この人は……。
何を言いたいんだろう?
ホントによく分からない奴だ。
だから嫌い。
キッと品川を睨みつけていると、品川は微笑んだ。
「聖菜ちゃんは嫌いかもしんないけどさ?オレは結構聖菜ちゃん好きなんだよね」
そう言ってあたしの瞳の奥を覗いてくる。
……う。
「何してんの?」
その声にあたしは反応する。
バッと横を見ると、無表情の須藤が制服のズボンにポケットを突っ込んで立っていた。
「す、どう……」
名前を呼ぶと、それには返事をせずに須藤はあたしに背を向けるように、あたしと品川の間に入った。
「こいつに……何か用?」
そう言って須藤は品川を見つめる。
すると須藤の後ろに立っているあたしにも感じる須藤の威圧感に、品川はまったく怯む事なく微笑んだ。
「別に?ちょっと話してただけだよ。じゃ、バイバイ。聖菜ちゃん」
品川はあたしだけを見て、微笑むと去って行った。
その後ろ姿を目で追ってあたしはムッとする。
何が言いたいんだろう。
そう思っていると、須藤が腕組みをして会社の壁に寄りかかった。
それを見つめながらあたしは口を開いた。
「あんた、何しに来たのよ」
って……あたし、可愛くない!!
好きな奴……にそんな事しか言えなのか……はぁ。
でもさ?
今までこんな感じでやってたから、今更かわい子ぶる事なんてできないし!
ガクンと1人肩を落としていると、須藤は口を開いた。
「随分仲よさそうだな。あいつと」
「え?」