【長編】唇に噛みついて
そう聞き返すと、須藤はニヤッと笑った。
「きーちゃんみたいなお子様は、ああいう大人に憧れる?」
その言葉にイラッとする。
だからあたしはフイッと視線を逸らした。
「あんな笑顔のキモい奴……嫌」
「へー。でもあっちはそうは思ってないかもよ?」
何か……言葉にトゲがあるような、気がする。
まさかね?
ここで自惚れちゃいけないよね……。
ヤキモチ妬いてくれてるんじゃないかなんて。
思っちゃいけないよね。
そう思い俯いていると、須藤がゆっくりとあたしを抱しめる。
え!?
驚いてあたしは目を見開いた。
「ひ、人が見てるから!」
平然を装って言うけど、内心心臓が壊れそうなくらいドキドキいってる。
でも須藤はそんなあたしをキュッと抱しめた。
「きーちゃんは、俺のお気に入りでしょ?」
ドキ……。
今の……反則でしょ?
そんな事言わないでよ……。
ドキドキしちゃうじゃん。
ときめいちゃうじゃん。
すると須藤はニッと笑って言った。
「前も言ったけど……俺気に入ったものにはしつこいし。簡単に離さないから」
ほら、また……。
あたしの心を奪っていく。
あたしは須藤を見上げて小さく呟く。
「さっきから須藤、変……。まさか、品川にヤキモチ妬いてる?」
冗談を言ってみた。
ホントは内心本気で聞いてみた。