ばいばい
◆ばいばい◆
今日はなんだかいつもより、家に着くのが早い気がして。
「ばいばい、康。」
あたしはいつものように、そう言って家の門をくぐった。
「…琴音!」
ドアノブに手をかけたまま、あたしは振り向いた。
「また明日な!ばいばい。」
明日は土曜日なのに、そう言い残して家へと入って行った。
あたしは浮かれてた。
康が《ばいばい》って言ってくれた。
ただそれが嬉しくて。
―――これが最後の
「ばいばい」
になる、そんなことも知らずに―――。