からっぽな街
ハナは、「プー」というあだ名にしたらしい。柔らかい丸い顔とおっとりとしたハナには、「プー」というあだ名が、とってもかわいらしく、ぴったりだった。きっと、子ども達からも、人気者になるだろう。
「あのね、キャンプでは、敬語は、使わないんだって。」
「へえ。そうなんだ。」
「うん。最初、慣れなくてさ、少し戸惑っちゃったよ。」
「ははっ。少しどころじゃないだろ?」
疑うように、にんまりと、上目遣いで見つめられる。
「ふふふ。うん。黙っちゃったよ。」
「はは。だろうな。ユウは、そういうの苦手だもんね。急に馴れ馴れしくされるのとか。」
「うん。だってさ、びっくりしちゃったよ。初対面から行き成り友達みたいに話しかけてくるんだもん。まあ、ありがたいことかも知れないけどさ。」
「はは。だろうね。」
通りかかったウエイトレスが、空になったグラスを見つけて、冷たい水を足してくれる。
どうも。と軽く笑顔で言いながら、ウエイトレスに少し頭を下げるテツヤの礼儀正しさに、うっとりとしてしまう。
テツヤを、誰にも渡したくない。
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