からっぽな街
なるべく岩場の先端で、足の下が波に近い崖を探す。表面がつやつやとして、平らになっている岩を見つけると、肩からバックを下ろして横に置くと、あぐらをかいて、海を眺めた。
一定のリズムを奏でる波の音、その海の終わりない大きさに圧倒される。まともに見ると、飲み込まれそうになる。海の存在に、自分の存在をとてもちっぽけに感じる。
この街は、どんなに自分にとって大きなものだと感じていても、それは所詮、海に浮かんでいる小さな陸であって、私はそこのたった1人の住人にすぎない。
普段生きている場所や、自分の世界が、恐ろしくちっぽけなものに思えた。
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