からっぽな街
14
静寂の街は、夜がいいと思う。それも、高台から道みたいに大きな階段に腰掛けて、街を見下ろすときの気分が、最高だ。やはり、私は、高い所から、広い世界を見ることが、好きなようだ。
光を失い、青く暗くなる空と、黒くなって行く街を見下ろす。空の方が、大きいのか。と、ぼんやりとする。

広すぎる、雑な造りの、古く禿げて、苔が覆っているアスファルトの階段は、所々雑草が生えている。 
階段は、山に、無理矢理コンクリートを塗りつけて階段にしたようなところなので、右側には、廃墟のような白い壁の箱型住宅が、山の斜面に合わせて階段のように存在し、左側には、山のまま、土と木の、大地が広がっている。人口と自然が、対立している。と言った、大雑把な造りになっている。
暗くなるにつれて、五メートルはありそうな大木に結び付けられている裸電球に、オレンジ色の光が灯った。
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