からっぽな街
ぽうっと、周辺に光が灯る。
アスファルトの階段に、自分の形の影が出来た。
街を見ると、ポツポツと、住宅に光が灯り始める。けれども、そこに、人がいないことを私は知っている。
生活はあるのだ。それでも、ここには、人間がいない。大股を開いて、階段に座る。デニムのショートパンツから剥き出ている自分の太腿に肘を置いて、手のひらに、顔を乗せる。
目の焦点を、泳がすように力を抜いて、空と街の境目を、吸い込むように眺めていた。 
近くの建物は、大きく、角ばっていて、温かみが無い。それに、欠けた古いコンクリートは、冷たい感じがする。
遠くになるほど、街の建物は小さく、ぎゅうぎゅう積めに見える。地面など見えず、コンクリートの重たい四角の家ばかりが見える。
玄関を照らす電灯はオレンジで、家の窓から漏れる光が白なのは、何故だろう。
ぎゅうぎゅうに家が建っているのに、空は、こんなに広いのは、何故だろう。
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