からっぽな街
「ばーか。」と、言うリッツの冷たい目線。
元気なきらりと対照的に、ぽくは、すっかりびびってしまって、さっきから一言も口を利かない。
「ぽく?だいじょうぶだよ。」
と、みんなが言うものの、すっかり怯えて固まってしまっている。
ぽくを挟むようにみんなで手を繋ぎ、暗い山道を出発した。
夜の山というのは、電灯がないと本当に真っ暗になる。きらりが、懐中電灯で照らしている場所だけが明るい。
「きらりー。こっち、照らしてよー。見えないよー。」
「ほーい。」
きらりが、足元が見えるように懐中電灯を工夫して照らしてくれる。少し上から照らすのが、みんなの足元を一番広く照らせることに、気が付いた。
「おお。いいね。その位置!」
リッツに褒められたきらりは、うれしそうだ。
「ねえー。ゆんー、こわいー。」
ぽくがしがみつくのと同じくらい、ちゃちゃが、しがみ付いている。本当に恐いらしい。

わっ!

「きゃああー!」
「へへへっ。私だよー。」
「もうー!リッツー!」
 いるいる、こういう子。と、懐かしく思ってしまった。
リッツとぽくは、さらに縮こまってしまった。
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