からっぽな街

「おおっ。ありがとー。良くできるね。」
と、きらりに言ったリッツがなんだか、かわいかった。
「余裕だぜー！」
と、次々に、みんなの釣れた魚を針から外したり、何度も魚を釣って楽しむきらりは、生き生きとしていた。
ぽく以外の全員が、自分の魚を釣り上げてから、十五分程経った時だった。
「ゆんー。きてー。早くー！」
ぽくから離れて、バケツに入った魚を見ていると、ようやく、ぽくの竿に魚が食いついたようだ。
「ぽくー！くいって、やって、魚の喉にひっかけて、がっと引き上げるのー！」
岩の上に仁王立ちし、大きな声で、動作を加えながら説明する。
「ぽくー！がんばれー！」
みんなが、ぽくを応援する。
「ぽくー！やれー！」
大きな声で、声援を送る。
野球帽を被った小さな男の子は、自分よりも大きな竿を持って、今、岩場に立ちすくんでいる。
真剣に、水の中の魚を見て、くっと、竿を動かす。