からっぽな街
「キャンプは、どこへ行くの?」
「長野県の山の中だそうです。」
「へえ!山かー。いいなー。俺もね、キャンプとか学生の頃、よくしてたんだよ。でけー石で火の周りを囲んで、窯作りとかしてさ、バーベキューとか、やったなあ。懐かしい。」
「はぁ。」
「何泊するの?
「いやー。そういうのは、まだ、よく、わかんないですね。」
「俺はさ、一回山に行くと、もう三週間くらいとか行ってたなあ。自炊すんの。火起こしてさ、飯盒で飯炊いてさ、自分で釣った魚を串刺しにしてあぶってよ、でっけー鍋にカレー作ったりしてたなあ。知ってる?飯盒で炊いた飯って、すんげーうめーんだ。ああいう場所で食う飯っていうのは、どうしてああうまいのかねえ。」
「はぁ。」
くだらない。また、俺、俺。窮屈でならない。これならば、まだ店が忙しくて、店長と話す暇の無い方がましだった。
「それからさ、山に居っとよ、夜の星っていうのは、がすげーきれいなのな。俺が学生の頃はよ……。」
あぁ。また、店長が話し始める。うんざりだった。早くこの場を離れたくて、話を切る。
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