からっぽな街
夜の二十三時を過ぎた頃、テツヤの携帯に、電話がかかってきた。「すいません。」と、携帯電話を持ったまま席を外したとき、テーブルに、山中さんと二人きりになった。
さっきまで、明るく賑やかだったテーブルが、急に、しっとりとする。しばし沈黙が訪れ、山中さんは、煙草に、火を付け始めた。
場を繋ごうと、会話を探す。
「山中さんって、本当におもしろい方ですね。笑いすぎて喉が枯れちゃった。こんなに笑ったのって、久しぶりですよ。」
「ふふ。ああ。そう。」
噴出しながら、煙を吐く。もんやりと、白い煙が零れる。息苦しい。
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