かげろうの殺しかた
詭弁だ。


隼人は確かにあの物の道理をわきまえない結城円士郎のおかげで、
この春より名目上は惣右衛門と同じ物頭の身となり、大組の士分となったが、

所詮は、世間知らずの名家の若造による異例の抜擢で成り上がった新参者。

代々の物頭の家である相模家と、元々は五十石の平侍である秋山家ではやはり格というものが違う。

隼人に対する惣右衛門の冷ややかな目は、本気で我が娘と釣り合う男になったなどと認めているようには見えなかった。


惣右衛門は嫁ぎ先のなくなった加那を厄介払いする相手として、

彼女と幼なじみである隼人を選んだに過ぎない。



これで俺は家中の笑い者だな、と思った。


しかし後悔はなかった。
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