かげろうの殺しかた
長屋門をくぐって、
物頭の屋敷から出て、


気怠い暑さを伴い始めた初夏の空気と、

武家屋敷の白い塀に眩しく反射する日差しとに

少し顔をしかめ


ふと、白壁の塀が続く道の先にそれを見つけた。




水たまり。




ここ数日雨は降っていない。

近づくとやはり道は乾いていた。


顔を上げると
また前方に、水たまりが現れている。


ゆらゆらと。


逃げ水だった。
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