かげろうの殺しかた
その頃、加那は花の盛りの十八。

犯人は杳として知れず、加那には縁談もあったらしいが、先方から断られて立ち消えた、と隼人は噂で聞いた。



隼人はと言えば、連れ添ったばかりの妻に先立たれて、ややぼう然としながら日々を送っていた。


互いの顔も知らぬまま
親類の紹介で二十歳で夫婦になって、まだ半年しか経っていなかった。

目立つ容姿ではなくとも清楚で気立ての良い娘だったが、
風邪をこじらせて寝付き、そのまま弱って逝ってしまった。

冷たくなった妻の骸を前にして初めて、自分はこの娘を愛おしいと思い始めていたのだと知った。

素っ気ない態度ばかりで、夫婦らしいことを何かしてやっただろうかと後悔して、


連れ添って半年間、己の妻となった娘に素っ気なく接し続けたのは、

どこかで幼なじみの少女を諦めきれず、
幼い日の淡い恋心を消し去ることができていなかったからだと悟った。



追うのをやめても、

逃げ水をずっと、

遠く道の先に眺め続けていたからだと。




だからといって、どうすることもできぬのに。
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