かげろうの殺しかた
いつの間にか静かになったので視線を戻すと、
女の子は泣くのをやめて、隼人が眺めている道の先を見ていた。

「にげみず?」

不思議そうに呟いた声は、びいどろが震えるような響きをしていた。

「近づいても逃げていく水たまりだ。
あそこに行っても何にもない」

女の子はびっくりしたように、涙に濡れた長い睫毛を動かして瞬きした。

「行ってみるか?」

隼人が尋ねると、少女はこくんと頷いて、

二人は逃げ水を追って、眩しい日差しの下を並んで歩いた。
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