かげろうの殺しかた
「ほらな。何もない」

水たまりの見えていた場所まで来て、隼人が言うと、

「ほんとだ、なにもない」

女の子は逃げ水のようにキラキラと輝く笑顔を見せた。


「あにさまは、どなた?」

「おれか? おれは──」


その笑顔に向かってその頃の己の幼名を名乗りながら、


綺麗な子だと隼人は思った。



隼人が十。
加那が七の初夏の日。

思えば、出会ったこの時から既に、隼人は加那に惹かれていたのかもしれない。
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