かげろうの殺しかた
御曹司に対する認識を隼人が改めたのは、

結城円士郎が、彼自身の血の繋がらない妹に対して、
密やかな恋心を抱いていると気づいたからだった。

義妹を見る目つきや、接する時の態度、仕草……
そういったものの中に時折、
熱にうかされたような
危うい炎のようなものが潜んでいて、ちろちろと顔を出すのが見えた。

それは妹に対する兄の表情ではなく、女に恋い焦がれる男の顔だった。


更には彼ら兄妹が、
自分と加那と同様に、義理の家族になるより以前からの幼なじみ同士だと知って、


この男も自分と同じように遠い水たまりを眺めていたのか。


隼人はそう思ったが、少し違っていた。


結城円士郎は義妹を諦めていなかった。

半ば強引に誘われて宵の町に繰り出し、酒を飲み交わしながら
隼人が義妹への想いについて指摘すると、

円士郎はふと真剣な、苦しそうな顔になって、
どんな手を使っても彼女を自分の正妻にしてみせるという意味合いの言葉を口にした。


その青臭さに隼人はあきれて──

やはり好きになれない若造だと思い、
しかし嫌いでもないと思うようになった。
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