かげろうの殺しかた
武士というものは、むやみやたらに刀を抜かない。

でなければ、人殺しのためだけにこしらえられた道具を常に身につけた者がそこらをうろうろしているなど、危なっかしいことこの上ない。

だから、例えばむやみやたらに刀を抜いて振り回す結城円士郎などは危なっかしいことこの上ないのだ。

主命があった時にのみこの武士の魂とも呼称されるヒンヤリした静かな鋼をば抜いて、制御された己の意志の下に、敵の素っ首だろうが己の腹だろうが斬ることができる。

理想を言えばこれが武士というものであるに違いない。

現実は、隼人とて己の腹など切るのは恐ろしいし、きっといざとなれば敵の首を落とすのも簡単なことではないのだろうと思うが。


しかし。
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