かげろうの殺しかた
ふと、剣を振るう円士郎の姿が浮かんだ。
あれは常に自ら進んで狂わされているようにも見えた。

あの御曹司のように剣を振るえるのが、天才ということなのだろうか。


ふうむ、と弥吾郎が顎に手を当ててうなり、「狂わされそうにか」と呟いた。

それから師は、視線を明かり取りの窓の外で降りしきる五月雨に移して、考えこむようにしながら口を開いた。


「秋山よ、お前は相手の動きを見ることに長けておる。
相手をねじ伏せ勝利しようとする猛々しい己をも、よく見るのだ。静かに、冷静に、冷徹に。
難しいかもしれぬが」


まだ若いからの、と、弥吾郎はやはり考えこむようにしてそう言った。


若いから──なのか。

ざあざあと、窓の外では五月雨が降りしきっていた。
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