かげろうの殺しかた

 【一】

よく晴れた初夏の、非番の日だった。


物頭の相模惣右衛門の屋敷に呼ばれた時、隼人は薄々何を言われるか予測がついていた。


「加那を嫁にもらってはくれまいか」


案の定。


惣右衛門は、幼い頃より隼人を厄介者としてしか映してこなかった双眸に
いつものごとくに苦々しげな色を湛えたまま、


そのように切り出した。


隼人が黙っていると、

ここ数年で頭に白いものが混じり始め、急激に老け込んだ中年の男は、

懐柔する調子になった。
< 7 / 76 >

この作品をシェア

pagetop