かげろうの殺しかた
想思鼠色の陽炎
おい、と体を揺すぶられ、名を呼ばれて目を開けると、結城円士郎が隼人を覗き込んでいた。
ずいぶんと時間が経っていたようで、座敷の外から差し込んだ夜明けの光が幻のように視界を照らしていた。
陰鬱な想思鼠色の世界だ。
「俺は生きているのか」
仰向けになったまま、朦朧とする意識で隼人は呟いた。
ああ、お前の勝ちだと、視界の中でこちらを見下ろして、円士郎が力強く頷いた。
全身を責め苛む激痛にうめいて体を動かそうとし、左腕の感覚がないことに気づく。
動くな、すぐに医者が来ると言う円士郎に、己の左腕はどうなっているかと問うと、酷い怪我だがちゃんとくっついている、止血は施したから心配はするなという答えが返ってきた。
急激に気力が萎え、もう一度意識が沈み込んでいくのを感じながら、隼人は剣の精のような少女の安否を尋ねた。
すると円士郎の後ろから娘が顔を出して、このとおり無事だ、酷い目にも遭っていないと円士郎が言った。
隼人は微笑んだ。
この二人は、自分と加那のような思いをせずにすんだのだとわかって安堵した。
心配そうにこちらを見下ろす少女に、あなたと手合わせしていたおかげで勝てましたと告げて、隼人は再び目を閉じた。
ずいぶんと時間が経っていたようで、座敷の外から差し込んだ夜明けの光が幻のように視界を照らしていた。
陰鬱な想思鼠色の世界だ。
「俺は生きているのか」
仰向けになったまま、朦朧とする意識で隼人は呟いた。
ああ、お前の勝ちだと、視界の中でこちらを見下ろして、円士郎が力強く頷いた。
全身を責め苛む激痛にうめいて体を動かそうとし、左腕の感覚がないことに気づく。
動くな、すぐに医者が来ると言う円士郎に、己の左腕はどうなっているかと問うと、酷い怪我だがちゃんとくっついている、止血は施したから心配はするなという答えが返ってきた。
急激に気力が萎え、もう一度意識が沈み込んでいくのを感じながら、隼人は剣の精のような少女の安否を尋ねた。
すると円士郎の後ろから娘が顔を出して、このとおり無事だ、酷い目にも遭っていないと円士郎が言った。
隼人は微笑んだ。
この二人は、自分と加那のような思いをせずにすんだのだとわかって安堵した。
心配そうにこちらを見下ろす少女に、あなたと手合わせしていたおかげで勝てましたと告げて、隼人は再び目を閉じた。