先生なんて言わせない
あたしの体はいっそうこわばった。
「俺は、高村のことが…」
そこで彼は何かためらうように声を詰まらせた。
どう反応していいかわからず、そのまま続きを待つ。
「好…」
「コラ! こんなトコでサカってんなよ」
鷹井くんの言葉をさえぎって、上から降ってきた声を合図に、あたしは息をついた。
よくわからないけど、ホッとしたんだ。
鷹井くんは離れ、あたしは声のした方を見上げた。
そこにいたのは、やっぱり佐野先生だった。
佐野先生は教官室へと続く階段の上で、手摺りに寄りかかっていた。
一瞬、佐野先生と目があったけど、すぐにそらされ、佐野先生は階段を降りてきた。
コツン、コツンと足音が大きく響く。
あたしはゴクッとのどを鳴らした。