先生なんて言わせない

あゆみちゃんがこっちを見て、声を張りあげた。


「千沙ちゃん、走らなくていいよ!」



そう言われても、あともう少しで着くから大丈夫と判断して、あたしは走り続けた。



そして、校門に着くその瞬間、


転んだ。



体が傾き、あたしはとっさに目をギュッと閉じた。



だけど。


あれ?



痛くない。



不思議に思って目を開けると、黒いTシャツが見えた。



勢いよく顔を上げると、すぐそこには鷹井くんが立っていた。


転びかけたあたしを支えてくれたんだ。


「ごめん、ありがとう」


あわてて彼から離れた。



すると、鷹井くんはおもむろにしゃがみ込み、あたしの足を触るから、あたしはまたあわてた。

< 111 / 354 >

この作品をシェア

pagetop