先生なんて言わせない
本当に小さな小さな声で先生があたしを呼ぶ。
花火の音でかき消されても不思議じゃない。
だけど、それはしっかりとあたしに届いた。
「何ですか?」
横目で花火を追いながらも、顔を佐野先生の方に向けた。
その先には、あたしをおおうように近づいてくる先生の顔があった。
先生が何を考えているのかわからない。
どうしてこんなことをしてくるんだろう。
わからないけど、なんだか前よりは嫌じゃない気がする。
先生には恋をしないって決めたのに、どうして?
佐野先生よりも自分が一番わからない。
近づいてくるきれいいな顔を見ながら、そっとまぶたをおろしかけた…。
だけど、
「高村!!」
鋭い呼び声で、我に返った。