先生なんて言わせない
こんな状況になってまでここに来ている自分になんだか笑える。
どうせ佐野先生のことだ。
ろくでもないことしか言わないんだから、約束なんてすっぽかしちゃえばよかったのに。
どうしてここまで来てしまったんだろう…。
不意に体に影がかかって、顔を上げると、佐野先生が息を乱して立っていた。
「…ハァ…ハァ…、おまえっ…、運動音痴のくせに足速すぎ」
「逃げるのだけは得意なんで」
そっけなく返事をしてうつむいた瞬間、わきの下に佐野先生の手が入りこんで、立たされた。
「きゃっ!? 何ですか!?」
佐野先生はあたしの腰を自分の方に引き寄せると、教官室のどアを開けた。
「とにかく中に入れ。何に逃げたのかも気になるが、それよりも約束の罰の話がある」
佐野先生はニヤリと笑いながら、あたしの体を反転させ、あたしの背中を軽く押した。
罰と聞いて、あたしの額からはひや汗が流れる。
今頃、ここに来たことを後悔し始めた。