先生なんて言わせない
佐野先生は口を動かしながらも、手も動かし、拾うのを手伝ってくれた。
不意に目の前が暗くなり、佐野先生に耳もとでささやかれた。
「おまえは賭けに負けたんだから、拒否権はない」
なんだかすごく近くて、体がカア~ッとなる。
耳を手で押さえ、うつむきながら、声をしぼり出した。
「…………ハイ」
拒否権はないんだ。
だから仕方ない。
そう自分に言いきかせた。
でも、それほど嫌とは思ってない自分もいる気がして、自分の気持ちがよくわからない。
佐野先生は「よろしい」と言いながら、あたしの頭をなでた。
何でだろう。
佐野先生の一挙一動にすごくドキドキする。
早鐘のように打つ心臓を抑えながら、落ちている物に手を出すと、
先に佐野先生がそれをとらえた。