先生なんて言わせない
不思議に思って、先生を見上げる。
「…おまえら、本当に練習していたのか?」
言われた内容といつもより低い声に、ドキッとした。
「ええ?」
あたしは愛想笑いをして取りつくろってみるけど、佐野先生には通じない。
「二番目のボタンが留まってないし、リボンがひどくゆがんでる」
見ると、まるであわてて服を着たような状態になっていて、顔が熱くなった。
あたしも鷹井くんも正常じゃない精神状態で整えたからだろうか。
あたしの反応が、練習以外の何かをしていたと認めてるようなもので、
佐野先生をあおってしまった。
「…ムカつく」
佐野先生はボソッとつぶやくと、いきなりあたしのリボンをほどいて、ボタンに手をかけた。
「他のヤツに触られないように、何度でも証を刻んでやるよ」
そうささやいたかと思うと、佐野先生はあたしの胸もとに吸いつき、チクリと痛みが走った。