先生なんて言わせない
「気がついたか?」
のぞき込むようにあたしを見ていた。
「…先生? あたし、何でこんなトコに?」
どうして自分が保健室にいるのかわからなかった。
佐野先生は近くのイスに腰を下ろしながら答えた。
「高村、オバケ屋敷で気を失ったんだよ。まさかそこまで苦手だとは思わなくて、悪かったな…」
佐野先生のつらそうな顔を見ていたら、あたしは怒る気も失せていた。
「大丈夫だから、先生」
心配かけないように笑顔を作った。
すると、なぜか佐野先生は顔をゆがめた。
あたしに再び影がかかったかと思うと、唇に温かいモノが押しつけられていた。
静寂が辺りを包み、どこかで鳴ったカタンという小さな音がとても大きく聞こえる。
何の音?
不思議に思ったけど、深く考える前に、離れた唇に気をとられた。