先生なんて言わせない

すっかり固まってしまっているあたしをよそに、佐野先生は何もなかったように振る舞う。



「さてと、お腹空いただろう? もう2時だ。何か食べに行こう」


佐野先生はそう言ってドアの方へ歩き出す。



「あ、はい。…って、ええ!? 劇は!?」


あたし、すっぽかしちゃった!?



あわててとび起きた。



「おまえなぁ…」


なんだか呆れたような声を佐野先生が出したので、なんだろうと佐野先生を見た。



先生は大またであたしの前まで戻ってきて、顔をあたしの前に突き出した。



そのあまりの近さに緊張する。


少しでも動けば、また唇がぶつかりそうだ。



「今日の劇は4時からだろ?」



言われて思い出した。


劇の最中にやってる催し物が見れるように、一日目と二日目では上演時間が違うんだ。

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