先生なんて言わせない
こっちに近づいてきて、顔がはっきりする。
ぱっちり二重の大きな瞳に小さくぷっくりした唇。
少なくとも、見た目には欠点の見つからない完璧な容姿の女の子だ。
「おまえ、いつこっちに戻ってきたんだよ」
「三日ぐらい前。またこの学校通うから、よろしくね」
佐野先生とそのコが、あたしにはよくわからない話をしているのを見ていると、
なんだか胸にトゲが刺さったかのようにチクンと痛んだ。
その子は誰?
佐野先生の何?
そんな問いかけの代わりに、あたしの口からは嘘が飛び出す。
「佐野先生、あたしもう劇の時間だから、行くね!」
「え!? おい、高村!?」
まだ3時前だから、本当は衣装に着替える時間まで30分近くある。
副担の佐野先生も知っているだろう。
嘘ってバレバレだとか、そんなことはどうでもよかった。