先生なんて言わせない
この感情に当てはまる言葉をひとつだけ知っている。
でも、それは絶対に先生にだけは持たないと決めていた感情だ。
それなのに、あたしは――。
「さてと、時間もうちょっとあるんだろ? テキトーに見まわるか」
「あ、はい」
それから時間が経つのは早くて、気づいた時には3時20分になっていた。
「ヤバッ、劇!」
着替えあるから、もう行かなくちゃ。
「佐野先生、あたし行くね」
「お~、頑張って来いよ。俺も見ててやるよ」
「や、見なくていいから!」
恥ずかしさで大きな声を出しながら、衣装に着替えるために教室へと急いだ。
「…いよいよだね」
舞台そでで客席を見ながら言った。