先生なんて言わせない
そう言いながら落ちそうなノートを支えてくれたガッチリした腕から視線を上げて行くと、
呆れたような表情を浮かべた佐野先生が立っていた。
「いきなり話しかけられたら驚くじゃないですか」
むくれてほおをふくらませそう言ったあたしに、佐野先生は苦笑いを返した。
「おまえなぁ、普通今から話しかけるぞなんて宣言しないだろう」
「そうですけど、せめて名前を呼んでからとか、視界に映るところに姿見せてからとかあるじゃないですか」
「はいはい、悪かったな」
佐野先生があたしの頭をポンポン軽くたたいた。
子供扱いされている気分になって、嫌だ。
まぁ、あたしなんて実際まだ子供なんだけど。
「で、どうしたんだ?」
「あ~~と、今日の1時間目のホームルームのことを思い出して」
少し言いにくい。
何たって体育教師の佐野先生はあたしの体育の成績を知ってるんだから。