先生なんて言わせない
その動作をしようとして気づいた。
あたし、左手でノート支えて、右手でノックしたんじゃないの!
片手でノート持てたくせに、
ずっと片手で持てないからどう扉を開けようなんて悩んでたわけ~?
自分が恥ずかしくて、顔に熱を持った。
きっと、今すごく真っ赤だよ。
「高村がそんなときって、だいたい考え事して、他のことが見えなくなってるときだろ。
何考えてたの?」
安藤先生がノートを受け取って、テーブルに置く。
「え~と…」
何だか言いづらいかも。
だって、『体育祭のこと』なんて言って、体育祭の参加種目聞かれたら嫌だよ。
リレーのアンカーなんて、安藤先生にも笑われちゃう。
昔、付き合ってたんだから、あたしが運動音痴だって知ってるはず。