先生なんて言わせない
背けた顔をほんの少しだけ戻して、横目で安藤先生を見る。
そのとたん、あたしの心臓が大きく脈打った。
安藤先生はつらそうな、苦しそうなそんな表情をしていた。
「な…んで」
そんな顔をしているの?
たずねたいけど、うまく言葉にならない。
「佐野先生のこと考えてたの?」
「え?」
あたしの心臓がまた脈打った。
「聞こえてた。さっきまで佐野先生と一緒にいたんだろう?」
安藤先生はあたしの後ろのドアを閉めながら言った。
「…そうだけど」
安藤先生のおかしな様子にあたしはどうしたらいいのかわからず、動けずにいた。
「千沙はもう佐野先生が好きなの?」
「…え?」
「それとも、鷹井くん?」