先生なんて言わせない
まだ完全に開ききらないまぶたを開けながら、起き上がろうとして、あたしは異変に気づいた。
「きゃっ」
起き上がろうとしたあたしの体が誰かに引っ張られ、ベッドに引き戻されたからだ。
驚きではっきりと見開いた瞳に映るのは、知らない部屋。
あたしの部屋には似つかわしくない、黒くシンプルな家具や、見覚えのないクリーム色の天井。
ちょっと瞳を動かすと、青いストライプ柄のシーツが見えた。
――そして、あたしの後ろに感じる温もり。
あたしは、誰かに抱きしめられていた。
なんで。
どうして!?
何がなんだかわからない。
とにかく、どこかわからないこの場所から、一刻も早く逃げ出したかった。
後ろで寝息を立てるその人を起こさないように気をつけながら、
そっと腕の拘束を解いた。
ベッドから抜け出る時にふと興味が湧いて、あたしはその人の顔をのぞき込もうとした。
だけど、発せられた「ん…」いう声にびっくりして、
あわてて近くにあったカバンをつかんで、部屋から飛び出た。