先生なんて言わせない
「気づいたんだ」
「え?」
何に?
つい顔を上げてしまった。
安藤先生はとても苦しく切なそうな顔をしていた。
あたしがこんな顔させているのかと思うと、心がズキズキする。
「この前の文化祭で千沙の劇を見たんだ。
最後、鷹井くんとのキスシーンを見て、オレは嫉妬してしまった。
教師としての体面よりも、千沙を誰にも触れさせたくないって思ったんだ」
「…あ」
あたしは…。
何て答えたらいいの?
わからない。
「オレ達、やり直せないか?」
わからないよ。
あたしは――。
「…ごめ…なさい」