先生なんて言わせない
「そういえば、樋渡が転入してきて、女子の方が多くなったんだったな」
佐野先生が考え込んでいた。
一緒に踊ってしまうの?
佐野先生は樋渡さんと?
横にいる委員長の存在すら忘れて、ただひたすら佐野先生と樋渡さんを見ていた。
「福澤先生、樋渡をよろしくお願いします。私がペアよりも女性同士の方がいいでしょう」
「そうですね。私なら男子パートも踊れますしね。てことで、樋渡さんよろしくね」
先生たちの会話を聞いて、あたしはホッとした。
佐野先生と樋渡さんは踊らない。
そうとわかれば、樋渡さんは嫌がっていたけど、そんな光景もほほ笑ましく思えた。
「高村ってわかりやすいな。佐野先生のことが好きなの?」
突然耳もとにささやかれ、あたしは耳を押さえながら振り返ると、
委員長がニヤニヤしてあたしを見ていた。
「な…何、言ってるの。そんなわけないよ」