先生なんて言わせない

ソッポを向いて、そのまま出入り口に向かった。



仕方ないじゃない。


いくらステップとか覚えてても、また足をもつれさすかもしれない。


自信なんてひとつもないんだもの。



「あ、待て」


いきなり佐野先生に肩を引っぱられた。



「な、何ですか?」


「走り込みの約束だけど、

明日の放課後、ショートホームルームが終わったら教官室に来てくれ」


佐野先生が腰を少しかがめていて、顔が近かった。



何だか恥ずかしいよ。



「あ、あたし、行きませんから」



恥ずかしさを隠すかのように、言うだけ言って、

あたしはバタバタと走って体育館を後にした。




静まれ、心臓。

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