先生なんて言わせない
「は?」
何のこと?
いきなり樋渡さんに話を振られたけど、何の話かわからなかった。
「ほら、前の体育の授業の終わりに、ふたりでリレーの練習をするって言ってたじゃない。
聞こえたの。それで、私も一緒に練習させてほしいの。私もね、リレーで高村さんの前なのよ」
「う…うん。いいんじゃない」
引きはがされても、またへばりつく樋渡さんを見てるとムカムカする。
そんな胸の内を抑えながら答えた。
クラスのために一緒に頑張ろうってことだから、断る理由なんてない。
「やった。じゃあ、佐野先生よろしくね」
「あ~はいはい。わかったからいい加減離れなさい」
「え~、いいじゃない」
「あ、じゃあグラウンドに行きましょう」
あたしはぎこちなく言うとふたりに背を向けた。